AIツールをガンガン使って研究する(2025年版)

  • 今年はAIを用いた研究支援元年といえる。様々な研究補助AIツールが普及し始めた。
  • 本記事では私が現在利用しているもの、利用しなくなったものを紹介する。
    • なお、厳密にAIっぽいものが関係ないツールも紹介する。

どのLLM?

  • 以下では各ステップごとにツールを紹介するが、その前に、どのLLMを使うのかという問題がある。
    • 私は、ChatGPT、Claude、Geminiのすべてで、それぞれ月額約3千円のプランに入っている。
    • APIを通したLLM利用の経験もある(AI研究者としても、後述の翻訳アプリの裏で動かすなどにおいても)。
  • これらのLLMを用途に応じて使い分けている。
    • Gemini:私好みのレポート的文章を生成してくれる。私の論文メモを入力させ、その要約をいい感じに出力してくれる。またGemini 3 Flashが最近登場し、これは生成速度が速いにもかかわらず、十分な性能を持っており、重宝している。
    • Claude:日本語文章能力が高いと言われていたが、最近はどのモデルも大差がなくなってきたので、チャット形式の利用は少なくなってきた。
    • ChatGPT:推論の実行を自動で判断してくれるので楽。また音声チャットが最も優れていると思う。そのほかの関連機能(Deep Researchやエージェント機能)も優秀。
  • GeminiとClaudeのプランに入っているのは、別の理由がある。
    • Gemini:AIプランがとても充実してる。Geminiの利用以外にも、以下のサービスがついてくる。特にDrive、NotebookLM、各種ドキュメントサービスでの利用がとてもありがたい。
      • Google Drive 2TB
      • NotebookLM Pro(後述の資料分析・回答生成ツール)
      • Google Docs, SpreadSheets, SlidesそれぞれでのGeminiの利用
        • 私はスライドをGoogle Slidesで作成するので、Gemini統合はとても有用。
      • Antigravity(後述のAIコーディングエージェント 兼 統合開発環境
      • その他のGoogleの各種有料サービス(Google Meetなど)
    • Claude:Claude Codeを利用できるのがとてもありがたい(後述)。
  • こうした理由のために、各種LLMの有料サービスに課金しているが、チャット相手として主に利用しているのはGeminiとChatGPTであり、実際には、その付帯サービスのほうがメインである。

論文を探す

利用しているツール

  • Elicit
    • 以前からあるAIによる論文検索サービス。AI統合の論文検索サービスとしてはこれが一番いい。無料版でも十分。
    • 下記のDeep Researchでは、ペイウォールに阻まれているものは提示されない傾向にあるが、こちらはアブストラクトだけでも拾ってくれるので、関係ないし、提示される論文のバランスもいい。
  • Google Scholar
    • 言わずと知れた検索ツール。検索サービス自体、裏ではAIが動いているわけだが、とはいえLLMライクではなく、単に標準的な検索ツールとして利用している。
  • Inciteful
    • 論文ネットワークを可視化。複数の論文を入力することで、紐づいている関連論文を探してきてくれる。
    • 数本論文を読んだ後に、それぞれこれに入力することで、関連研究を探す手間が大幅に削減できる。
  • Deep Research(各種LLMサービス)
    • 論文を探す目的で利用することはあまりないが、論文を解説付きで探してこさせたいときに利用している。

利用しなくなったツール

  • ResearchRabbit
    • Incitefulと同様の論文ネットワーク可視化ツール。
    • 一時期使っていたが、何度かのアップデートで仕様がよくわからなくなった。ログインが必要で、それによって過去のネットワークも見れるので良いかもしれないが、私はインスタントに使いたいのでIncitefulのほうが利用法に合っていた。
  • Connected Papers
    • こちらも論文ネットワーク可視化ツール。
    • しかし、利用上限が厳しくてやめた。

余談:Xも有用

  • ある意味、Xも論文を探すツールとしてよく利用している。研究者アカウントをフォローしておけば論文情報が流れてくるのでありがたい。
  • 哲学に関心がある人向けだが、最近「哲学の新着論文を紹介するBot」というのも運営してるので、こちらもぜひチェックしていただきたい。

紹介の例:

論文を読む

利用しているツール

  • 各種LLM
    • とりあえずpdfを入力して、大雑把に要約させるときに利用している。読むべき論文かどうかを読む前に判断できるようになるのがありがたい。
  • NotebookLM
    • 各種資料を入力することで、それらを根拠とした回答ができるようなLLMサービス。文書資料を根拠にして回答を生成するので、資料以上のことをほぼ生成しない。
    • 個別の論文を読むというより、複数の論文メモを入力して、文献横断的な読み方をするときに使っている。
    • またYoutubeなどのURLを入力して動画の要約をさせることもできるなど、様々な利用方法がある。とにかく要約に使いやすい。
    • ポッドキャストやスライド作成機能もあるが、私の好みではなかったので、それらは利用してない。
  • 自作の翻訳アプリ

    • 原文を入力して「翻訳」を実行すれば、訳文が表示される仕組み。ヘビーに使っている。
    • 後述のAIコーディングエージェントを使って、Webアプリの知識ほぼなしに構築できた。LLM APIのやり取り部分をPythonに担わせており、そこだけは理解できるので、翻訳の重要な部分を自分でカスタマイズできるようになっている。
    • 裏ではOpenAI APIを利用して、GPT-5.2やローカルLLM(LM Studio)などにシステムプロンプトと原文を送信し、訳文を出力させ、それを表示させるようにしてる(下記画像参照)。訳文の保存はもちろん、システムプロンプトに専門用語の対訳表を組み込んでおり、専門用語の翻訳をちゃんとさせてる。モデルや推論労力(reasoning effort)なども調整できるようにしている。
    • 1万字を超える(few-shot事例含む)システムプロンプトを渡していて、完全に私好みにプロンプトチューニングされた翻訳アプリと化している。もうこれなしに今の速度で論文を読める気がしない。
    • 訳文のこなれてなさは意図的である。逐語訳的でこなれてないからこそいい。こうしたカスタマイズが可能なのは、自作だからこそである。 翻訳ツールの画面。画面上部にモデル選択やカテゴリのプルダウンメニュー、翻訳・保存・読み込みボタンが並び、その下には左右分割で英文と和文のテキストエリアが配置されている。左側には形而上学の語源に関する英語の文章、右側にはその日本語訳が表示されている。 この例はSEPのMetaphysicsの1節冒頭の文章。https://plato.stanford.edu/entries/metaphysics/
  • Obsidian

    • Markdown形式でテキストをローカル保存するメモ管理アプリ。
    • 私は、読む論文すべてにレジュメ的なメモを作っており、その保存のために利用している。アウトライーナー的な使い方もできる。
      • 以前はCosense(後述)を利用していたが、ローカルに保存できる・AI連携が取れるObsidianに変更した。
    • Obsidianを利用する理由は大きく3つ。
      1. 論文メモの保存はもちろん、論文のアウトライン執筆など、各種の文書作成用途で利用している。Markdown形式が扱いやすく、HackMDという別のサービスを利用することでメモのオンライン公開・共有も容易になる。
      2. NotebookLMや各種LLMに、ローカル保存されている各論文メモ(Markdownファイル)を入力し、次の「論文を書く」で役立たせるため。
      3. プラグインの「Copilot」(Microsoftのそれではない)を入れることでAI連携が容易であるため。文を短くさせたり、メモの要約を作成させたりしている。

検討したが利用していないツール

  • Readable
    • 論文のレイアウトを保って翻訳するサービス。
    • レイアウトを保つ必要をあまり感じないので、利用してない。またしっかり使おうと思うとプロプレミアム契約をしたくなるが、そうであれば自作の翻訳アプリで十分なので利用してない。
  • Nani!?
    • 冗談みたいな名前をしているが(「なに!?」)、最近登場した非常に優れたAI翻訳サービス。特にUI・UXが非常に優れている。ぜひ利用してほしい。
    • 日常的な翻訳利用では欠かせないものになってきた。しかし、論文を読む場合にはまだ使っていない(自作の翻訳アプリができてしまったのでそちらを利用)。

利用しなくなったツール

  • DeepL
    • 完全にLLM翻訳に取って代わられてしまったと思う(しかも上記のNani!?というより優れた翻訳サービスも登場した)。どうやら企業向けで頑張っているのもあり、個人利用で恩恵を受けにくくなってきたのも大きいようである。
    • それでもまだ、後述のDeepL Writeは使い物になると感じているが、Grammarlyで十分なので、利用をやめた。
  • Cosense(旧:Scrapbox)
    • 私はデータがクラウドに保存されてないと嫌なので、以前はObsidianを利用せず、こちらのCosenseを利用していた(なお、Obsidianで保存したローカルファイルをGoogle Driveで自動で同期するようにしている。)。またコミュニティとしても好きだった。
    • ただ、このAI時代にはローカルにデータが保存されてないのが辛い。また独自の記法を採用してるので、他に移行しにくいのも微妙だった。
  • Zotero
    • Cosenseを利用していた関係で、PDFの保存とほかの文献管理のために使っていたが、Obsidianでローカルに移行した関係で、PDFもObsidian上で保存できるようになり、利用をやめた。

論文を書く

利用しているツール

  • Obsidian
    • 既に説明したとおり。アウトライナー的な使い方をしている。私は論文をアウトラインから書き始めるので、重宝している。
  • OverleafCloud LaTeX
    • どちらもオンラインのLaTeX編集・コンパイルサービス。
    • AI研究者であればほとんどがOverleafを使っていると思うが、有料版にしないと使いにくくなってきており、しかも料金が高いので、最近は使うのを渋っている。
    • Cloud LaTeXは日本のサービスで、各種科研費関連の申請書テンプレートなどが用意されており、無料利用でも大変使いやすい。今後はこちらに移行していこうと思っている。
  • Grammarly
    • 文法誤り訂正ツール。UIが優れていると感じる。
      • Grammarly独自のAIもあり、言い換えなどもできるようになった。
    • 以下で説明するように、各種LLMを使えば、文法訂正はもちろん、いい感じの言い換えもできるが、どこがどう修正され、なぜそう修正されたのかがわからないので、個人的にはGrammarlyのほうが好み。
    • とはいえ限界もあるので、そこをLLMに任せている。
  • 各種LLM
    • LLMなしに論文を執筆するのはもう考え難くなっている。
      • 英語論文を書くときには必須級。これなしには書けない。
      • アウトラインは未だに自分で作成するが、アウトラインから地の文にするところが私の弱点・ネックなので、そこを大幅にサポートしてくれる。「こう言いたいんだけど、うまい表現ないかな」と思ったときなど、とにかく文章作成であればなんでも使える。

利用しなくなったツール

  • DeepL Write
    • DeepLには、実は翻訳だけでなく言い換えサービスもある。こちらは個人的に好みだったが、上記の他のサービスで十分であり、また有料版も高いので、翻訳利用をやめるとともやめた。

その他:コーディングエージェント

概要

  • 実はここが今年一番重要なパート
  • 今年最も重要な進展は、AIコーディングだと思う。
    • これまでも補完的・支援的なAIコーディングツールはあった。
    • しかし、今年はバイブコーディング(vibe coding)と呼ばれる実践が誕生した。これは、AIに自然言語で指示を出し、コーディングを完全に任せる、というものだ。
    • 私はAI研究者で、一応、Pythonを一通り理解でき、またプログラミング一般の知識で理解できる範囲である程度の言語を読める。LLMによるコードの説明も概ね理解できる。しかしAIのほうがコーディング能力が数百倍高いので、Pythonでの実行部分に関してだけ細かい指示を出すが、ほぼ任せきりになっている。
    • (加えて、AI研究者の私にとってのボトルネックはコーディングだったので、その部分を任せられるようになり、AI研究が楽しくなってきた。最高。)

利用しているツール

  • 利用しているAIコーディングツールは以下の通り。
    • Claude Code
    • Codex
    • Antigravity(利用を検討中)
    • いずれも、AIがプログラミングしてくれるサービス。
    • 個人的な好みとしてはClaude Code。
  • 私が作成したアプリは、「論文を読む」で紹介した自作の翻訳アプリと、以下の2つの開発中のWebアプリ、およびスマホのアプリだ。

    • TODOタスクマネージャー(ほぼ完成)
      • かかる時間(cost)、進捗具合(progress)、認知負荷(mode)などを入力できるようになっており、それらを考慮して優先度スコアを自動で計算し、今日やるべきタスクを教えてくれるように実装した。 タスク管理アプリ「Todo Manager」のダッシュボード画面。上部に「Today's Focus」と題されたタスク一覧があり、DEADLINE、COST、PROGRESS、MODE、SCOREなどの属性を含む詳細なテーブルが表示されている。「アウトライン再考」というタスクが10210.4という高いスコアでタスク最上位にある。LLM連携のボタンや「優先度計算式について」という欄が含まれている。
    • メール文作成アプリ(開発中)
      • LLMにメール本文をそのまま入力するのは、プライバシーなどの観点で望ましくなさそうであり、また、いちいちプロンプトで指示するのを面倒に感じていた。
      • そこで、spacyなどを使って固有表現抽出を行い、正規表現でurlやメールアドレスなどを取得し、匿名化処理を行って、それをLLMに入力してメール文を生成させるアプリを作った。 「AI Mail Reply Generator」のウェブUI画面。左側に受信メールの入力フォーム、右側に匿名化プレビューとマッピングテーブルが表示される2カラム構成。
    • 話すスピードが速すぎるときに警告するスマホアプリ(開発中)
      • 授業アンケートで、私の話すスピードが速すぎるという回答が目立ったので、Androidスマホ音声認識レコーダーとして用いて、1分間に話す文字数を計測させ、一定の速度を超えたら警告(バイブレーションや画面上の点滅)するアプリ。
      • これを導入してから、アンケート結果でも「速い」が少し減ったので、効果はあるらしい。 「Current Speed 0 CPM」と表示された音声認識アプリの操作画面。中央に「START」ボタン、下部に「音声認識結果がここに表示されます」というテキストボックスがある。
  • いずれも、私が直接コーディングしたところはほぼない。私はAIに指示を出し、エラーが出たときやUIや機能が微妙なときに修正指示を出すことで、AIにアプリを作成させてる。

  • なお、どれも公開するつもりはない。
    • AI研究者としてAI研究のための実験コードしか書いてこなかったので、フロント・バックエンドの典型的なコーディングを知らないし、保守運用できるようなものにもなってない。UIデザインの基礎も知らないし、ベストプラクティスも知らない。
    • 重要なのは、私が個人的に使う分にはそんなのは些細な問題だということ。私の好みに合わせて作成(LLMに指示)すればいいし、LLM用のAPI通信以外で外部ネットワークに開かなければセキュリティを気にする必要もあまりない。
  • また、Claude CodeやCodexを、Obsidianのデータが保存されてるフォルダで実行すれば、各種論文メモをベースに回答するAIエージェントにもなる。
    • ただ、以前はこの利用方法で期待したものが得られなかった。最近はモデルの性能も上がったので、今なら有用かもしれない。

他におすすめのツール、方法があればぜひ教えてください。